旅と暮らしのつながるところ

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長い長い旅と暮らしのはざまを見つけたような日。

旅が終わるのは、決して「現実に戻る」のと同義ではない。
旅も、現実の続き。
足跡は、必ず残る。
そして、次の行き先を目指す。


2011年 瀬戸内海の直島に住んでいた頃の日記から。
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勤務先の美術館は、今日は休館日。
フェリーと電車を乗り継いで、
東山魁夷せとうち美術館へ行って来ました。

今回の展示作品は、東山魁夷が
北欧を旅し、その風景を描いたもの。

スウェーデン、デンマーク、フィンランドと
そこに広がるのは、懐かしい色でした。

わたしがスウェーデンですごしたのは半年。
そこからデンマークやフィンランドへも旅をした。
冷たい、真っ暗な冬から、
陽射しが皆を誘い出す春、
白夜の始まる夏、、、と
体の細胞全てで感じた空気を、
一瞬のうちに思い出させた、彼の作品。

「誰にとっても同じ風景というものはない。
 見る者によって、風景は異なる。」
という言葉を残した作者。

日本からロシアを隔てて向こうの北の国で
呼吸をしていたのは、もう10年も前のこと。
記憶が薄れていくのが寂しかったけれど、
あの時、わたしは確実にそこで生きていた、
実感みたいなものを与えてくれた。
彼の描いた北欧は、私が歩いてきた道程を、
ありとあらゆる感覚を、鮮やかに思い出させてくれた。

他には、日本(を描いたと言われている)の
海を題材にした作品もあった。
波の動き、しぶき、そこには音まで聞こえてきそうだった。




この美術館は、一階のカフェの大きな大きな窓が、
瀬戸大橋が大きく見える場所にあって、
これも一枚の作品のよう。
快晴だった今日は、瀬戸大橋も大きく見えて雄大。


帰りのフェリーでは、夕日から夜の色に変わる空が見えた。
目の前のことと、美術館で観た作品の色、
遠い記憶、新しい居場所、
いろいろ入り混じって不思議な気持ちだった。
島を縫って進むそのフェリーは、
わたしが今住む島へ連れていく。

港に降り立ち、借りた青い自転車を走らせ、
もう見慣れた坂道を登る。
途中、海の向こう、高松の明かりが見える。
水平線をふちどるようにして、さざめく光。
深い青と水面に反射した光の上を行きかうフェリーの汽笛の音。

生まれ育ったところとも、
今まで住んだところとも違うけれど、
この道を通ると静かな安堵感が浮かぶ。

いまだ旅を続けているような気持ちも、
やっと生活に慣れてきた気持ちも両方持ったまま、
自分の部屋へ戻った。

2011.08.11
















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